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石の上にも三年 ― 心 眼 ―  1988年10月12日

  

1. 真心の表現           P.1/6
2. 村八分             P.2/6
3. 何を言われても         P.3/6
4. 無言の行            P.4/6
5. 土用の行            P.5/6
6.「正しい」 = 実行         P.6/6

3.何を言われても      P.3/6

それで私は、三年間は曲がってる物にも沿うてけって言葉があるから、道場はあちらの道場なんだから、あちらに逆らうってことはいけないことなんだ。


たとえどんなにあっちが間違ってても、そこの道場行ってる以上は、その道場に習わなくちゃいけないんだ。


一切ね、もう逆らっちゃいけないんだ。でも、でも、って言葉、一切使っちゃいけないんだと、自分に言って聞かせましたよ。


それでどんなこと言われても、すいません、ごめんなさい、申し訳ありません。それで通さなくちゃいけないんだなって、自分に言ってきかせました。それで、それを三年間やろうと思いました。


そういうふうに心定めするようになったらね、案外、変なもんですね人間っていうのは。それからってものは苦しくなかったの。むしろやってみようと思った。


正しいと思ったことなんだから、最後までやりとおそうと思ったの。で、いろんな意地悪をされました。


そのうちにお祭りがあると、お膳ができましてね、それで、今日は皆さんお祭りですから、あちらのお部屋へお膳の用意してありますからって言って、皆さん、そっちへ行くんですよね。


そうすると、何々さん、あなたもどうぞ、隣のお友達にも、何々さん、あなたもどうぞって言われて、
私の顔見ると、どうぞと言わないんです。だからつい私もひがむ。


そう言いながらも、やっぱり人間ってのは憐れですね。その時点でもう、ああ私は言葉かけられないんだから、私はあっちの席に座んなくていいんだ。座んない方がいいんだ。


そう思ってね、私が出ようとしたらお友達が、「鶴田さん、何で?あんた、あっち座んないの?」


うん、私は言葉かけられないからって、言ってね、


「でもあなた神様のお祭りじゃないの」って言われたんです。


ああそうかと、神様のお祭りだっけな。そしたら、あんた、どうぞあちらへ行きなさいって言われなくも、


神様のお祭りなんだから、神様を祝う心でね、私はそこに行って、皆さんと一緒に座ってお赤飯をご馳走になりましょうと、そう思ってね、私はそっちの席に行けたの。


お友達から言われて、ハッと思った。あ、そうか、神様のお祭りか。言葉かけられないから行かないっていうんじゃ、そりゃあ神様に申し訳ないなあ。


言葉かけられようがかけられまいが、神様を祝う心になんなくちゃいけなかったんだなって、自分に言ってきかせましてね、


申し訳ないこといたしましたって、心の中で神様に謝って、それでそっちへ座ったの。


そうすると、ここでもまた意地悪されるんですよ。皆さんに湯呑みを、こう前に置かれるんです。
お赤飯の折がここにあってね。


その湯呑みにね、世話人さんがお酒を少し、注いで歩くんですよ。向こうに30人、こっち30人ぐらいかなあ。


そうするとね、隣りまでお酒注いでね、私の顔ちょっと見るとね、私にはお酒を注がなくてもいいんだって、もう、すぐ私の隣りを先に注いじゃうんです。私の湯呑みにはお酒を注がないの。


また鶴田さん意地悪されてるわって、みんなに見えちゃうんですよね。それだけがとっても寂しい。


なんかもう、穴があったら入りたいっていうのは、あのことだなと思うくらい、はぁ、もうホントに居たたまれない気持ちですよ。


これも修行だなと思って、ジッとこらえて我慢しましたけどね。でも、顔には出せない。


泣きっ面したら、こっちの負けだと思うからね。泣きっ面もしないようにして、それでにこやかに平然とした、そういう姿勢を保ちましょうと思ってがんばるのも大変なのよ。


これも修行なの皆さん。こういう心を、あなたがたに話すのは、あなたがたも、そういうことが修行なんだということを、わかってもらいたいと思うから、こんな話も出るんですけどね。


それでもう、みんなが、また鶴田さん意地悪されてるわ。鶴田さんの湯呑みにはお酒注がれてかないわ。


まあ、あの人いつまで意地悪されてるのかしらって、みんなが一斉に見てるんですからね。たまったもんじゃないんですよ。


それでもジッとこらえてね、下を向いたらいかにも憐れそうだから、下向かないで、真正面向いてね、それでにこやかにしてる。


その気持ちは何とも言えない。今思い出しても泣けてきますよ、はっきり言って。ホント、辛かったです。それでも私はやりこなしましたね。

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